妄想(1)
ついにこの項目を
書く時が来たか。。。という気持ち
1回の記事に書き切れない(まとめ切れない)ので
まずは妄想とは何なのかという点を整理した後
いくつかのケースを挙げて考察しようと思う
妄想とは?
非合理的かつ訂正不能な思いこみのこと。妄想を持った本人にはその考えが妄想であるとは認識しない(病識がない)場合が多い。精神医学用語であり、根拠が薄弱であるにもかかわらず、確信が異常に強固であるということや、経験、検証、説得によって訂正不能であるということ、内容が非現実的であるということが特徴とされている
(ソースURL:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A6%84%E6%83%B3)
とある
妄想と空想*1は
以下の点で決定的に異なる
・妄想は現在の生活上の問題(自他を問わず)に密着している
→空想は生活に影響を及ぼさない*2
・妄想は当事者にとって現実である*3
→空想は当事者にとっても現実ではない
つまり
空想は自他が暮らす現実との分離ができているが
妄想はその分離ができていない
と言う事ができる
認知症特有の妄想
最も多いのは「物取られ妄想(盗害妄想)」とされる
※所有欲に強く関わる妄想であり
特徴的なのは
「取られる」という現在進行形ではなく
「取られた」という過去形が多い点で
家庭内や社会での役割喪失
また慣れない施設の入所直後においては
自身の安心できる居場所の無さを原因とした
喪失感の訴求から起きるのではないかと
考えられている
・認知症初期においては
大事にしている持ち物のうち
特に金銭(年金, 貯金, 現金)や貴金属について
身近な親類(息子/娘やその嫁婿)に取られたという
訴えが多い
(施設では他の入所者に取られたというケースも起きる)
・中期以降においては
生活上必要な衣類, 下着などについて
訴える場合が多いが
物に対する執着や(取ったとする)他者への関心は薄く
「無くなった」という事についての訴えが多い
現在の生活に密着して継続する妄想については
次の機会に触れる
物取られ妄想の対処法(考察)
必要なのはメンタルケア
初期の認知症高齢者の場合:
→当事者が大切にしている持ち物を
バッグ等に入れて持たせたり*4
無くしたと訴える物を一緒に探しに行ったり*5
「ここに居ていいんだ」と感じさせる働きかけをする等
安心感を与えるメンタルケアが
最も重要となる
中期以降の認知症高齢者の場合:
→「説得より納得」という言葉がある
当事者にとっては
物を取り返す事よりも
失ったモノゴトへの郷愁を聴き入れられる事の方が
重要となってくる*6
精神疾患における妄想と対処法(考察)
全く根拠がない妄想(一次妄想)と
実際のエピソードに連続する妄想(二次妄想)の
二つに分ける事ができる
いずれも反証によって
他者にとっては妄想であると解るが
当事者にとっての現実と
他者の現実との差を埋めるためには
多くの労力(精神力)を必要とする
ケアを行う際には
反証による論破ではなく
その反証によって妄想なのだと
当事者自身に気付かせる事が
重要になるだろう
追記:関係妄想について
当事者と特定の他者
あるいは特定の物件や出来事の間に
実際には関係が無い
または関係が一方的であるにも関わらず
相互関係があるのだと思い込み
当事者, 他者, 物件等に影響を及ぼす妄想
(しばしば他者のみならず自身にも影響を及ぼすケースがみられる
周囲は「コドモじゃないんだから(そのうち絵空事を言わなくなるだろう)」
と放置してしまう事が多い)
私の周囲に居た人のケースから
いくつかの実例を挙げる
・例1:恋愛妄想
→「通勤電車に乗り合わせる男性と目が合った
それ以来その男性が気になって仕方がない」
→「もしかしたら私はあの男性が好きなのかもしれない」*7
→「いつもあの男性に見られているような気がする」*8
→「もしかしたらあの男性も私が好きなのかもしれない」*9
・例2:誇大妄想
→「自分は世の中で困っている人を助ける立場にある」
→「困っている人に助けを求められてもいいように
自らを鍛えておかなくてはならない」*10
→「助けを求められる存在なのに
世間での評価が低いのは納得できない」*11
→「なぜ困っている者たちは自分に助けを求めないのだろう?」
→「きっと自分の存在が理解されていないに違いない」*12
・例3:被毒妄想
→歯科治療時に医師から
『しばらくは薬の味がするかもしれませんので
お食事は1時間くらい避けて下さいね』
と言われていた
→しかし2時間後に食事をしたら妙な味がした
→「歯医者さんは1時間くらいで大丈夫と言っていたから
この妙な味は薬のせいではないだろう」
→「そういえば最近
自宅で食事をすると妙な味がするし
最近は下痢も続いている」
→「家族に毒を盛られているに違いない」*13
*1:過去に実在せず現実に無いモノゴトを頭の中で創り上げる事。未来への原動力になりうる。ファンタジーのストーリー, SFの機械や都市やライフスタイルなど
*2:生活に影響を及ぼすレベルの空想(例:「自分は世界を救う勇者である」と思い込んで実際に勇者として旅に出たりモンスターに準えた小動物を殺害する)は妄想といえる
*3:しかしその現実は他者に受け入れられない事が多い。なぜならば他者にとっては当事者の観ている現実を共有または共感できないから
*4:コレについては悲しい実話がある。。。がココには書かない
*5:介護者が単独で探しに行ってはいけない。介護者が渡す事で当事者は「返してもらえた」→「あなたが取っていたのだ」と理解してしまう(誤見当識)ケースがあるから
*6:もちろん他者に奪われたのが現実であれば対処する必要がある。その際において奪った人も認知症高齢者であれば問いつめたりしてはならない。その人の側にも理があるからだ
*7:ここまでは現実であり他者も受け容れる事ができる
*8:当事者が実際に見られているどうかを確かめるには第三者が男性の視線を追跡しなければならない。これは困難である。しかも過去の検証にはならないし反証も困難である
*9:その後この人は何度もその男性に告白したり勤務先を訪ねて面会を求めるなどの行動を起こしたが想いは成就しなかった。最期は男性といつも乗り合わせていた電車に飛び込んだ。遺書は無かったので衝動的に行動したのだろう。その心理を思料するに「八百屋お七」を想起させるが。。。褒められたものではない
*10:ここまでの考え方自体には問題が無い
*11:このあたりから誇大妄想